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株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.031】総合戦略:『マネジメントを勉強したい』という経営者が増えた!
             

  先日、ある人が訪れ『最近、マネジメントの勉強がしたいという経営者が増えた。何かできることをしたい』と言い残して帰られました。また、別の人から『悩み多き経営者が増え、御社にセミナーを依頼するかも知れません』というメールをいただいたのも、最近のことです。
  もちろん、以前から“勉強したい”と願う経営者は少なくはなかったかも知れませんが、今や、ただ不況で“時間ができた”というばかりではなく、多くの経営者が“学びへのあせり”を露骨に表現し始めたのかも知れません。それは、今のままでは“にっちもさっちも行かない”のに、どうすれば良いか“見当”もつかないからだと推察されるのです。
  そんな経営者の増加は、士業にとってプラスなのでしょうかマイナスなのでしょうか。そうした“状況”を捉えて、考え始めるべき時かも知れません。


             
   
    【01】 経営者の“いかんともしがたい”気分
   
        もちろん、皆が皆そうではないでしょうが、かなりの数の経営者が今、“いかんともしがたい気分”に陥ってしまっているのは事実でしょう。そして、その中の多くが、つい最近まで『長期的なことよりも、足元の課題で精いっぱい』などと言っていたのではないでしょうか。
  つまり、今、目先のことしか考えて来なかった経営者に“目先の仕事がなくなる”ほどの状況が生まれているということです。いわゆる“長期的な視点”で、コツコツ成果を積み上げようとしている経営者とは違い、特に“目先”に全神経を集中して来た経営者層には、現状は“耐えがたい”ほど、“何をして良いか分からない”のだとも思えるはずです。
  もちろん、長期的視点から“コツコツ”積み上げを図っている経営者層にも、安心や自信は持てないでしょうが、“ガンバリ”のエネルギーは比較にならないでしょう。
       
   
    【02】 目先にさえ“できる”ことがなくなった?
   
        つまり、『先行き?、そんなもの見えないから、今目の前のことに集中せざるを得ない』として来た経営者から“目の前の希望(打つ手)”が失われつつあるということです。そして、それが“士業”先生にとってプラスかマイナスかを考えるなら、やはり答えもプラスかマイナスかの2通りなのだろうと思います。
  そして“プラス”を感じようとするなら、“今、なぜ経営者から打つ手が失われつつあるか”が、少なくとも“把握”されていなければならないはずなのです。事情が分かっているなら、指導や助言の方向性と、新たな“取り組みテーマ”や“顧問先やスポット契約の獲得視点”が見えて来るからです。
  では、なぜ今多くの経営者が“打つ手”を見失っているのでしょうか。
       
   
    【03】 オイルショック直後には…
   
        歴史は繰り返すと言いますが、オイルショック直後にも、こんな時期がありました。当時は、大企業も含め、多くの企業経営者が“自社の将来”が見えないことに暗澹としていたものです。そしてその時、特に大企業の経営中枢から『先が見えないのは、従来と同じような視点で見ているからではないか。先行きの見方を変えなければならないのではないか』という“声”が上がったのです。
  そして、そこで“やり玉”に上がった“従来”とは、高度成長が終わりかけた1960年代後半から70年代はじめに“未来を開いた”発想でした。要するに“古い発想だから先行きが見えないだけで、まさに現代(オイルショック後の1980年代)的発想に立てば、やるべきことははっきりしているではないか”という声が、その後“実行”につながって、バブルに向かって“勢いよく”展開していったわけです。その時の、 ある意味では“勢い”が良すぎて、バブル崩壊を招いたのかも知れません。
  今となっては、その“勢い”の貴重さが身にしみます。
       
   
    【04】 今は…
   
        そして、同じように今、“オイルショック直後”や“バブル崩壊後”の発想ではなく、別の視点が必要なのです。つまり、視点を変えれば、少なくとも“先行き”が見えて来るということです。
  バブル崩壊後、ほぼ20年もの間、『遠い先行きより今日の飯のタネ』を考える人が主流でした。それはたぶん、明治維新以降の日本には一度もなかった現象なのではないでしょうか。私たちの国は、常に“長期”を見据えて、目先の障害にこだわらずに頑張ったからこそ、ここまで来たのです。そして、ここ20年、私たちの“本分”を忘れて、目先にこだわり過ぎたから、徐々に“苦しさ”を深める結果になったのかも知れません。
       
   
    【05】 ニーズとシーズとモデルの3要素
   
        いつの時代も、先行きを見る時、“市場のニーズ”と“自分にできること(シーズ)”と“実践方法(ビジネス・モデル)”の3要素をベースにして来ました。しかし、その“ニーズ”と“シーズ”と“モデル”のどれから検討を“始める”かで、時代に適した展望が開けるかどうかが決まったとも言えるのです。
  たとえばオイルショック直後は、“新しいビジネスモデル(軽薄短小)を当時の通産省が打ち出す”ところから始まり、各企業が技術開発をして、新しい市場に出すという順番で“ビジネスの再生”が図られたわけです。つまりそれは“モデル⇒シーズ⇒ニーズ”の順番で考えれば見える展望でした。
  一方、それ以前の貿易摩擦期(高度成長の末期)には、市場はまだまだ海外に開ける(ニーズ)、だから自分にできること(シーズ)を、スケールアップして効率化(モデル)して勝ち抜けようとする、“ニーズ⇒シーズ⇒モデル”の順番による時期だったのです。
       
   
    【06】 “シーズ志向”の時代?
   
        そして今や、20年間の空白を経て、私たちが取り組むべき展開は、どうあるべきなのでしょうか。それは、結論から申し上げれば、“シーズ⇒モデル⇒ニーズ”の順で実践発想する“シーズ志向”なのです。しかも、この“シーズ志向”は、大規模事業よりも中堅中小事業戦略に向くため、今や“私たちの時代”になり得るかも知れないのです。
  逆に言えば、大規模事業には難しい“シーズ志向”が求められたために、大企業中心だった日本には、この20年間、目立った展開がなかったのかも知れません。
  そんな大きな大きな“歴史的流れ”に気付き始めた経営者が増えているのでしょう。大企業に“景気を良くしてくれ”と期待するのではなく、“自分たちのマネジメントで何とかできるし、何とかしなければならない”と感じる経営者が増えたはずだということです。
  それは苦境にあえいだ1980年代のアメリカ経済が、“スモール・イズ・ビューティフル(小さい事業こそ素晴らしい”として、復興の土台を築いた現象の再来でしょうか。それとも、純日本風の新たな挑戦なのでしょうか。
       
   
    【07】 企業経営者の“求め”に応える先生
   
        いずれにせよ、新たな潮流の中にありながら、すっきりしない“見通しの悪さ”に苦しむ企業経営者に、“シーズ⇒モデル⇒ニーズ”の順で発想する“シーズ志向”ノウハウを、実践的に提供する“先生”が、今各方面で求められているのだろうと感じるわけです。それが『(現状をなんとか打開するための)マネジメントを学びたい』という経営者の切実な声になって現われているのでしょう。しかし、そんな経営者に“従来発想”のマネジメントが教えられるなら、ある種の悲劇を感じないではいられません。
  いずれにしても、“シーズ志向”は大企業の戦略発想とは違い、“体験”的に感じ取れる“実践ノウハウ”であるため、まずは先生方が“ご自分の事務所の将来展望を開き、その実現の道を考える”ことから、始めていただきたいと考えています。
  誰かの“ノウハウ”をコンサルティングするのではなく、ご自身で実感する“実践の道”を、新たな“士業ビジネス”にできるなら、企業にも士業にも“一石二鳥”になり得るからです。
       
   
    【08】 自事務所の展望を開くだけでも…
   
        もちろん、企業経営者に教えるのではなく、自事務所の事業展開だけに取り組みたいという発想も重要だと思います。一度、時代に見合う“シーズ発想”に取り組まれるなら、その“肝”の部分が実感できて、先生方ご自身がされる“経営者への日常的なアドバイス”も違った雰囲気を持つようになると期待しているからです。
  オイルショック直後も、始めは言葉でしかなかった“軽薄短小”が、実践段階に進むにつれ、日本経済の国際競争力を飛躍的に高めて行きました。“発想”が、夢のような“現実”を生んだのです。そして、“歴史は単に繰り返すのではなく、形を変えて繰り返す”という言葉の通り、今、あの時のパワーを形を変えて取り戻すべき時に来ているのだろうと思います。
       
   
    【09】 眠っている宝の再発掘?
   
        こうした“大きなテーマ”は、なかなか表現できないので“長期展望の作り方”と呼ぶことにしています。しかし、そこには、“先生方の事務所自体の展望とその実現法を考える士業ビジネス発想”と、“先生方が企業をリードする存在になる”という意味での企業指導発想の両方が含まれるわけです。
  しかも、先生方が企業をリードする時、資産税対策指導や月次の決算指導、あるいは経営計画やキャッシュフロー管理指導から、大きく離れたテーマを持つのではありません。そうした既存のテーマの“前”に、企業経営者を動機づけるための“ストーリー”を持つことが大事なのです。なぜなら、今の中堅中小企業に必要なマネジメントは、その重要な一部分を、すでに会計事務所が持っており、その“業績管理手法”を使いこなすことで、多大な成果を発揮する分野が少なくないからです。
  これは、新たな取り組みと言うよりは、眠ったままになっている“マネジメント手法の宝”の再発掘なのかも知れません。
       
     
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