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会計事務所、マーケティング、コンサルティング、ヒント集

株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.099】士業ビジネス:今、営業を敬遠すると、先行き“よりきつい営業”に追いやられる?!
             
 

 士業事務所が営業すると、士業としての品格が下がるという感じ方もあるようです。そうでなくとも、“営業”は低姿勢にならざるを得ず、その結果、買い叩かれて損をするという考え方もあるかも知れません。
 しかし“紹介獲得”も営業活動の一つです。そして、品格を上げる紹介獲得活動も、逆に下げてしまう行動も、両方、あり得るのではないでしょうか。
 士業ビジネスが過当競争に陥った今、“営業”自体を敬遠するのではなく、むしろ“先生らしさ”が自然に伝わる営業法を、考えるべきかも知れません。
 そのためには、《営業に対する誤解》を検証するところから、始める必要がありそうなのです。


             
   
    【01】イメージが悪い“営業”概念
   
       今もなお、小説やドラマの世界では、営業者と言えば“卑屈に頭を下げて回る”ものだという“思い込み”があるようです。しかし“営業”は、非常に幅の広い概念です。
 ドラマに出て来そうな“伝統的な商人”でも、単にセールスをしているだけではありません。“目利き”を発揮して買い付けをし、独特の業者等を使って市場告知をし、ここ一番では各方面と交渉し、更に自分の組織をマネージします。そして、その全体が“営業”なのです。
 もちろんドラマでは、見るのもおぞましい“悪徳商人”が描かれることが少なくありませんが、“悪徳”者は、政治家にもジャーナリストにも、警官にも教師にも、同じように存在します。私腹を肥やして高笑いするのは、商人の特質とは言えません。
       
   
    【02】会社組織の中で熾烈な環境に追いやられる“営業担当”
   
       “商人”ではなく、ノルマを課せられた組織内のセールス担当者のように、日々厳しい状況に置かれる“営業者”も、『あんな風にはなりたくない』と感じさせる存在かも知れません。“人”が馬車馬のように、尻を叩かれ、“売るためには手段を選ばない境遇”へ追いやられるように見えるからです。
 そして、『そんな境遇に耐えられないからこそ“国家資格”をとった』というのも、そんな対比の中では説得力を持つでしょう。しかし『なぜ、そのセールス担当者は尻を叩かれるのか』と問わなければならないと思います。
 その理由は、実は、いわゆる“営業活動の範疇”を超えて、“度を越した成果”を求められるからだとも言えるのです。
       
   
    【03】本来の営業(経営)活動が持つ“3つの基本”
   
       “営業”の基本は、3つあります。まず1つ目は、“目利き力”を活かして“売り物”を作ること、あるいは仕入れることです。そして2つ目は、“自分にとって好ましい顧客を選ぶ”ことです。これは、顧客に対する“目利き力”と言えるかも知れません。そして3つ目は、売り買いが“対等”になるような“バランスのよい価格設定”を行うことです。
 この“3つの基本”が守られていれば、営業が“泥沼”に陥るケースは少ないはずです。しかし、組織のトップは、歴史的に、“事業全体の営業”から“セールス”だけを切り離し、“与えられた売り物”を“誰彼構わず売る”部隊を作り上げて来たとも言えます。もちろん、そんなケースでは“価格設定”の権限は、“セールス”部隊には与えられません。
 ただ、それは工場で、歴史的に過酷な労働を強いられた働き手と、根は同じでしょう。家事労働に従事させられた女中さんのような存在も、同様だったかも知れません。やはり“セールス”の特質とは、言えそうにもないのです。
       
   
    【04】“裁量権”を制限されたセールス部隊の末路
   
       時代が変わるとともに、現場に“裁量権”を与えずに酷使することへの“反省”か、いわゆるセールス部隊を“営業部”と呼び、裁量を行使しながら、創意工夫を通じて“本来”の営業活動を“させる”かのような“呼称”が出来上がって行きます。
 しかし“裁量権”を得ても、ほとんどの“営業部”は“売り物”を変えることはできず、ノルマのためには“顧客”も選べず、結局“価格(値下げ)”だけが、有効な“裁量分野”となって、現場に残されたのです。しかも、“値下げ”裁量は、現場に濫用されないために、“担当者の報酬”と、何らかの形で相殺するのが普通になります。
 こうして、過酷な“営業部門”が出来上がったと言えるわけです。『だから、やっぱり営業は嫌だ』と言う前に、考えるべきことがあるのです。
       
   
    【05】このままでは“歴史的な営業主体”の悲惨が士業に襲い掛かる?
   
       士業ビジネスは今、“売り物を選べる”状況にあるでしょうか。もしかしたら、関与先も“紹介”等で、断れずに契約させられる傾向があるかも知れません。紹介でなくとも、積極的に働きかけなければ、好ましい先との出会いは保証されないでしょう。“顧客も選べない”懸念があるのです。
 そんな中で“過当競争”が始まり、士業も“価格という最後の裁量”で勝負せざるを得なくなったのが、昨今の状況だと言うと、言い過ぎになるでしょうか。
 『士業も営業に取り組むべきだ』と言うのは、“営業”の名の下に、過酷な活動を強いられる“歴史的な営業部”を受け入れるべきだということではなく、このままでは逆に、士業ビジネス自体が“過酷なセールス”と同じ状況に陥るという懸念表明なのです。
 “売り物”にも“顧客選択”にも自由度がなければ、過酷な“値下げ競争”で、手段を選ばず、同業者を出し抜く主体にならざるを得ないかも知れません。しかし、申し上げるまでもなく、それは仮に“成功”しても、決して“ハッピー”ではあり得ないのです。
       
   
    【06】士業が“本来”の営業発想に立ち戻るべき時
   
       そのため“本来の営業発想”に戻るべき時に来ていると申し上げたいわけです。そして、専門業としての士業なら、“背に腹は代えられない大規模ビジネス”とは異なり、“本来の営業発想”が、ぴったりとフィットする可能性が高いとも、ご指摘したいのです。
 本来の営業発想とは、先に申し上げた通り、“売り物(専門サービス)の目利き”“顧客選定の目利き”“バランスのよい価格設定”の3つです。
 もちろん、従来の“顧問契約”や“業務代行契約”が、先生方の活動を、今後も更にスムーズにして行くなら、“売り物”上の問題はありません。しかし、それが“企業”にも“紹介先”にもアピール力を失い、“値下げ”以外に活路が見えなくなってしまうなら、“売り物”から再設計しなければならないのです。それが、2000年代当初から申し上げて来た“士業商品化”の課題です。そして、ここで申し上げる“本来的営業”の出発点なのです。
       
   
    【07】士業“業務”が企業にとって喉から手が出る“実務”に化ける
   
        しかも、士業ビジネスの場合は、先生方には《当たり前に見える業務》から、“企業が導入したら価値がある”仕組みや実務を、こう言ってよければ無限に生み出すことができるはずなのです。“経営管理”に終点はないし、士業事務所には、“経営管理”と無関係な業務は少ない からです。
 たとえば、資金収支の先行きを捉えるための“収支見通し”を、企業内で行えるようになったら、経営者の経営感覚さえ変わり得るかも知れません。そして、その収支見通し計算にも、とりあえず現状の延長上で簡便計算をする方法から、きちんと経営計画を作るスタイルまで、それこそ“千差万別”なのです。
 その時、会計事務所が『収支見通し計算代行は、顧問料の範囲内、またはプラスアルファの業務サービスに留まるが、計算法を企業に教えることを考えると、従来とは違う収入源を作れる』と気付かれるなら、“売り物”の変換が始まったことになります。
 もちろん“販売”の実現には、“営業力”が必要ですが、士業の場合、その“営業”は“提案”活動に他なりません。『買ってください』と腰を折るのではなく、『こうすれば経営が革新される』と“教え諭す”ことなのです。それはまさに、本来の意味で“先生”になることです。
       
   
    【08】無料で働く“先生”は存在しない!
   
       提案の際に“価格”を申告することに抵抗を感じるなら、“無料で働く先生はこの世に存在しない”ことを思い起こすべきでしょう。医者も弁護士も、学校や塾の先生も、家庭教師も、決して無償では働きません。会計事務所の先生が“有料化”に躊躇されるから、関与先に“付け込まれる”とも言えるのではないでしょうか。
 少なくとも“標準価格表”を(予め作成した上で)提示し、詳しくは《見積書》を出すというスタイルは、どんな事業者にとっても“奇異”なものではありません。
 しかも“価格提示”には、強い機能があって、先方が有料を受け入れなければ実施する必要はないのです。『無理矢理業務を強いられる』のは、価格提示をしていない時でしょう。
 ただ『適正価格の設定は難しい』とは言えるかも知れません。
       
   
    【09】専門サービスの“価格設定”の基礎とは?
   
       適正価格決定に際しても、特に“専門業”では、先生ご自身が“当該業務に掛かる労力や費用”を想定し、ご自身で『この価格なら引き受けよう』と思える価格設定から、有料化に取り組み始めるべきでしょう。専門業では、定価や相場を置くべきではありません。
 定価や相場は、“普及型のサービス”や“一般業務”に必要なものであり、顧客の“悩み”や“更なるバージョンアップ”等の個別欲求に応じる専門業では、価格も個別に設定されるのが普通だと考えるべきなのです。そうしなければ、たとえば計画経営と名がついたものは、それがどんなに困難な内容を含んでいても、顧客に“定額”を主張されるようになりかねません。
 そして、先生の価格提示が受け入れられれば、契約は成立です。しかし、たとえば『高い』と言われるなら、先生が“どこまで譲れるか”を考え直すべきでしょう。譲れないなら契約すべきではありません。“別の機会”を探すのみです。
 その潔さがあれば、提案と価格提示活動を通じて、営業の第2の要素である“顧客選び”が進んで行きます。
       
   
    【10】本来の意味での営業力が数年後に問われる?
   
       2017年末現在、中堅中小企業界の景気にも“持ちこたえている”感が残っています。2018年も、どうにかこうにか、市場は元気を維持するかも知れません。そして、こんな時だからこそ、士業が営業の基本に立ち、“売り物再設計”と“顧客選定”と“有料化”に取り組むべきなのだと感じているのです。
 2020年が終われば、あるいはそれを待たずに、また“厳しい状況”が訪れるでしょう。その時、“営業力”を身に付けているかどうかは、今以上に重要なテーマになっているはずです。
 たとえ、そうでなくとも、本来の意味での“営業”は、まさに“経営の重要テーマの一つ”ですから、経営をサポートする専門業が“関知しない”わけには行かないと考えざるを得ないのです。
       
       
   
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