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経営計画の指導に限らず、たとえば資金繰り管理で、あるいは月次管理から生まれる改善事項への取り組みで、“計画的に経営できない”経営者は、少ないとは言えません。
一方、その“計画性”の乏しさで、経営計画や予実管理の指導が、労多い割に効果的ではない“仕事”の一つになってしまっているのかも知れません。
でも、なぜ“計画的”になれない経営者が多いのでしょうか。そして、そんな経営者への対処法はあるのでしょうか。2回シリーズで取り組みます。 |
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【01】 スポーツの“心技体” |
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優れたスポーツマンに求められる条件を、時々“心技体”と言うことがあります。もちろん、“心”は精神的強さであり、“技”は競技技術、“体”は鍛え上げられた肉体です。これは、たとえば『いくら肉体を鍛えても、心が弱ければ競技には勝てないよ』というような意味合いで、オリンピック等に出場する競技者には、“3つとも揃う”必要があるものだと言われます。
ただ、一般のスポーツマンには“技術を磨くばかりではなく、心と体も鍛えましょうね”という示唆になっています。たとえば、少年野球の“選手”が野球の技術練習ばかりに没頭するのではなく、地味なトレーニングや“(練習の)苦しさに負けない”心を養いましょうということになるでしょうか。
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【02】 計画的経営の“思技実” |
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計画的に考えて行動する経営者になるためには、“心技体”ではなく“思技実”の3拍子が必要です。その“思”は、思考、つまり考え方であり、“技”は計画技術、“実”は実行です。
ただし、少年野球と経営の最大の違いは、野球選手に『技術ばかりではなく…』とは言えても、経営者には言えない、あるいは言ってはいけないということです。つまり、経営者は計画的な経営への取り組みに当たり、技術以外のことに没頭する傾向があるのです。
何に没頭しているのでしょうか。それは“思”、つまり考え方です。 |
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【03】 婿入り後継者のA社長は… |
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いわゆる“婿入り後継者”であるA社長は、中国の三国志や日本の幕末の物語が大好きです。それは、長期展望や強い志を持つ登場人物が、次々に厳しい競争を勝ち抜いて行くからだけではなく、そこに“戦略的発想”“計画的実行”の貴重なお手本があるからでしょう。
また、経営計画セミナーなどに参加しても、そこでは“計画の必要性”や“計画経営の成功秘話”あるいは“戦略発想のイメージ”などが盛んに語られます。ところが、『では計画ってどうやって作るの?』『予実管理ってどんなことをするの?』『資金繰りの見通しはどうやればできるの?』といった類の“実務”は、ほとんど当然のように“無視”されることが多いのです。 |
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【04】 いつの間にかついてしまった“変な癖” |
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基礎体力もできていないのに、ボールを投げたりバットを振ったりしている少年には、おかしな癖がつきがちです。非力なのに、高度なことをしようとすると“体の中の何かがごまかす”のでしょう。そして、そのおかしな癖は、後になるほど直しにくいものです。
同様に、“考え方”ばかりに明け暮れて、技術や実務を学ぼうとしない経営者にも、変な癖がついてしまうのです。どんな癖でしょうか。それは『面倒な実務は自分の仕事ではない』という感覚です。これは、当初は“奇妙な癖”程度の話で済みますが、継続すると“その経営者の実力を害する”ものです。
大きな企業で経営計画を担当している時、拡大役員会などに“事務方”として参加していると、社長や社長候補のエリートは、計画内容、つまり技術的なことを議論し、質問するのですが、こう言ってよければ“平取”で終わる人は、“考え方”より深くは入りません。 |
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【05】 実力者とそうでない人の間にある決定的な差 |
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それは“入らない”のではなく、“入れない”のでしょう。つまり、エリートになる人とそうでない人の差は、“思”ではなく“技”にあるのです。ある“平取”は、筆者の計画書原案の内容に怒り、『私が作り直す』とすごみましたが、結局作れませんでした。その一方で、エリートは驚くほどの詳細な“計算式の間違い”を指摘します。実は、この差が経営力なのです。
技術ばかりを学ぶ少年が、結局大した選手にはなれなように、“考え方”の研究ばかりに明け暮れる経営者は、結局“自分では何もできない”ばかりではなく、“細部を射ぬけない”ため、計画を作ることも、作られた計画を分析評価することもできないわけです。
これでは、“計画的”になりようがありません。同じことが、中堅中小企業経営者にも言えるはずですが、少し事情が異なるようなのです。 |
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【06】 大企業の“思”だけが一人歩き |
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本気で“計画的な経営”に取り組みたいと念じる経営者は、“思”に留まらず“技”を学ぼうとします。ところが、大企業の社員なら、“計画的経営の技”を学ぶのは、それほど困難ではありません。どの企業も“予実管理”に、かなり細かく取り組んでいますから、若いうちから“技”を身近に学べるのです。それに“思”を加えれば“戦略的な計画発想”が生まれます。
しかし、そんな大企業の中で“技”をベースに養われた“思”が、書籍やセミナーで一人歩きし、中堅中小企業の経営陣に至ります。そして、“技”のないまま“思”を得る経営者の多くが、結局は“空想的”になる一方で、“計画的”にはなれないのです。
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【07】 形ばかりの予実管理は“儀式”? |
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婿入り後継者であるA社長の会社は建設業で、もちろん予実管理は行っており、毎月予実比較を含めた業績検討会も実施してはいます。しかし、A社長がその検討会を“定例儀式”と呼ぶように、大企業の予実管理とは大きく違うようなのです、
なぜ“儀式”なのでしょうか。それは、A社長が予算や実績の“数値”の詳細を把握できないからです。そして、会長(先代)が行う“雨嵐のような質問”を、毎回同じ“繰り言”としてしか聞けないのでしょう。A社長は、自分が経営に自信を持てないのは、“婿養子”だからだと言っていますが、本当のところは“数値が分からない”からなのです。 |
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【08】 どうすれば“計画的”になるのか |
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大企業の経営者は、必ずどこかで“自分で予算を作る”体験をしています。事業部が違っても、その体験から、他の事業部の実態を身近に感じることができます。つまり“数値が読める”のです。一方、中堅中小企業の経営者は、往々にして『実務は自分の仕事ではない』と思い込みます。そして、数値を作った事がない分、数値に親しみもイメージもわかず、経営全体が“儀式”になってしまうのです。
この実態にメスを入れ、経営者自身が、ある程度でもよいから“数値”を作れなければなりません。しかし、そんなことが可能なのでしょうか。次回、ご一緒に考えてみることにいたしましょう。
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