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株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.021】総合戦略:“展望なき時代”にふさわしい“力強い展望”の持ち方(3)
             

  さて、前回申し上げた“将来展望を開く生産性”とは、どのような考え方に基づいて、何を実践するものなのでしょうか。まずは、その骨子からとらえておきたいと思います。

             
   
    【01】 “生産性=効率”ではない!
   
        “生産性=効率”だと考えると、大変な結果を招きます。たとえば、他の事務所なら3日かかる仕事を1日で完成させると、顧客は喜ぶどころか、手を抜いたと思うか、さもなければ『なんだ簡単な仕事だったのか』と感じるだけだからです。
  サラリーマンが、人より早く仕事を終えても、評価を得るどころか、他の仕事まで回されるように、早い仕事は(この国では)必ずしも、評価の対象にはならないのです。そのため、たぶん世界標準的な考え方である“生産性=効率”が、この国では“うまく機能しない”のでしょう。
  では、この国で機能する“生産性”とは、どのようなものなのでしょうか。
       
   
    【02】 “生産性=手放すこと”?
   
        この国で機能する生産性を一口に言うなら、“生産性=手を放すこと”に尽きると思います。たとえば、誰かにゴルフクラブを買ってあげたら、スウィングを教えろと言われ、スウィングを教えたら、コースデビューへの付き添いを頼まれ、コース予約を引き受けたら、ウエアーの買い物に付き合わされた…、などという“手が離せない”環境を作らないことです。
  しかし、この発想にも“問題”が残ります。筆者も1990年代初等に“知的生産性向上ノウハウ”を作り、その中で“仕事は手放せ”と言い切りました。しかしその後、安易な“仕事の手放し”により、当人は楽になっても、組織や周囲、あるいは顧客が迷惑する事例を多々見るにつけ、考え方が変わってきました。そして、自分だけが生産性を上げ、他者の迷惑を顧みない“人種”の出現に、大きな責任の一端を感じてもいるのです。
  ただし、“仕事を手放す”という発想自体を捨てるのではなく、“手放す”ことから“奪われる”方向へ転換すべきだと感じているということです。
       
   
    【03】 “生産性=奪われること”!:本来の知的生産性
   
        “奪われる”ということは、それまで教えた生徒が『後は自分でやります(もう先生は必要ありません』と自律(自立)することです。つまり、“後は自分でできるように丁寧に教える”ことが、“奪われる”という状況に至る近道なのです。
  “教える”という行為も、たとえば『ほら、このホームページにのっているクラブを、実際ショップに行って買いなさい。詳しいことはAさんという店員が知っている』と伝えるだけで済むかも知れません。しかも、相手が“教えてもらった”と自覚できる人なら、勝手にクラブを買い、勝手に練習して勝手にコースデビューし、勝手にウェアーまで買って、それでも『あなたのおかげでゴルフを始められた』と感じるでしょう。それこそが、本来の“知的生産性”だと思うわけです。
       
   
    【04】 労務提供型発想からの脱却
   
        それは、ある意味で労務提供型から“知的見識”提供型へ、士業事業が生まれ変わることを意味します。何かをしてあげるのではなく、“教える”ことで料金を獲得するビジネスへの転換です。これが、“現代的な生産性発想”なのです。
  経営改善は、毎日経営業務をしている経営者自身が行うのが、一番確実で効率的です。そのため、士業先生は、何かを経営者の代わりに行うのではなく、経営者が『あっ、分かった分かった!後は自分でやります』と言う状況作りを始める必要があるのです。
  もちろん、今のままでは無理ですが、土台を作れば可能になります。
       
   
    【05】 顧客経営者の中に“土台”を作る!
   
        土台とは、“教えるための効率的なプログラム”“教えられる側が学ぶべき基礎知識”です。たとえば、従来、業績管理を前年対比の道具にしか使っていなかった人には、経営管理など無益なもので、どうでもよいものかも知れません。しかし、それが“利益を生み出す源泉”だと実感し、自分なりにBSやPLの数値の意味が分かるなら、事態は大きく変わります。そして、その実感を生み出す“研修”がプログラム化されれば、事態は更に大きく変わり始めるはずです。
  一方、中堅中小企業が組織的にチームワークを発揮できないのは、従業員が悪いのではなく、実は経営者自身が組織の一員になっていないからだと気付けば、企業経営者は自ら規則や制度作りに取り組むようになるでしょう。
  しかも、自ら取り組む時、私たちは賢者となって“己の無知”を悟り、専門家の助言を得たいと思えるのです。たとえ、その助言が有料でも…。そうなれば、士業先生は“知的に語る”だけで、ビジネスができるようになります。
       
   
    【06】 それでも“展望がない”と言えるか?
   
        もちろん、明日そうなると申し上げているのではありません。何事もすぐにはなりません。しかし、そうなる道に立って、そうなる道を歩むことはできるはずです。しかも“正解につながる道”というのは、面白いもので、歩き始めるとすぐに、それなりの“成果”に出合えます。
  その“成果”とは『ああ、企業経営者を知的に刺激教育することこそ、士業の社会的役割なのだ』という展望かも知れませんし、道に進む過程で企画した研修などが“有料化”できるという実利かも知れません。いずれにせよ、『企業経営者が自分の“事業”しか知らず、“経営”に無頓着だから社会的弱者に甘んじてしまうのだ』と実感できるなら、企業経営者に経営センスを提供することが、いかに尊い仕事かを実感できるはずなのです。
  その時、誰が『士業ビジネスに将来展望がない』と言えるでしょうか。
       
   
    【07】 20011年は実践企画スタートの年
   
        2011年は、たとえ小さな一歩でも、そんな実感を皆様方と“共有”できる時にしたいのです。一部の会員先生方とは、個別に“経営者のための基礎講座”企画を進めていますが、それを確実に広めて行きたいと考えているわけです。
  ただ、もちろん長続きしなければなりませんから、先生方の現状の業務を邪魔するのではなく、むしろ現業と“共鳴”するような企画にしたいため、時間はかかっても、個別に皆様方と、具体的なご相談を進めるところから始めるともに、今後とも“一地域一会員”の原則を守りながら、具体的な企画を深めて行きたいと考えるわけです。
       
   
    【08】 意識の二極分化
   
        “生産性=奪われること”です。そのためには、関与先や顧客企業に、“必要な見識を提供するだけで、後の世話をしなくて済む”ような環境に、経営者の“意識”や“能力”を持って行かなければなりません。そして“意識”や“能力”を持つ経営者が、士業事務所を離れるのではなく、士業事務所から“労務提供”を受けていたい経営者だけが、もっと安い事務所やパソコンシステムに移行し、従来の士業事務所から離れて行くと、先生方が認識しなければならないのです。
  もちろん、それでも“労務提供”型でサービスを続けたい事務所は残るでしょう。しかし、そこには“知的見識提供型事務所”の下請け的な業務しか残らない時代がくると覚悟すべきでしょう。
       
   
    【09】 中途半端な事務所の市場が侵食される!
   
        そして“知的見識提供”が、難しい専門見識を教えることではなく、企業経営者が『あっ、それなら自分でやれる』と感じる“実践見識”を増やすことだと理解するなら、企業と士業は、“現在よりも強い協調路線”に乗れるはずです。両者の“利益”が一致するからです。
  もちろん、その時には、現在ほど多くの士業は必要ないでしょうから、士業業界は自然に再編されることになるかも知れません。そして、たぶんその頃には、驚くほどの労務提供型事務所と、知的見識提供型に移行できた事務所が生き残り、どっちつかずの事務所が淘汰されているのでしょう。弱肉強食の掟は、いつも中途半端な層に厳しいからです。
  しかし、どうせ生き残るなら、生産性の高いポジションに立った方が良いと考えるなら、今から準備を始め、コテコテの古い体質の事務所と戦うのではなく、中途半端な事務所の市場に侵食することを考えるべきだと思います。なぜなら、中途半端なところには、事務所にもその顧客企業にも、将来展望は生まれにくいため、せめてその事務所の関与先企業だけでも救う必要があるからです。
  今年も、以上のような方向性の下で、ご報告やご提言を進めてまいります。
       
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