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株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.025】総合戦略:顧問料をテーマにすると見えてくる“士”業の面白さ?(1)
             

  士業先生が、顧問料やスポット契約の“価格”をテーマにされる際には、少し“遠回り”して考える必要があります。それは、しばしば、先生方の中に“商売は嫌いだ”とか“商売は苦手だ”という感覚を、お見受けするからです。
  ところが現実には、その嫌ったり、苦手意識を持ったりしている“世間一般の商売感覚”にこそ誤謬があるかも知れません。先生方は、“商売の本姿”への“誤解”を嫌っているだけかも知れないということです。
  現代的な“商売感覚”を嫌うことは、それだけでも商売の原点を復活させる責務の入口かも知れません。もちろん、そんな責務を負わない場合でも、当面のビジネス・メリットを得る糸口にはなりそうなのです。


             
   
    【01】 士業こそが商売の王道…?
   
        マーケティングが苦手と言うより、“商売”自体が嫌な先生は多いようです。もちろん、背に腹が変えられなくなるほど追い込まれれば別ですが、『一般のサービス業ではあるまいし、売り込みをするのには抵抗がある』ということかも知れません。
  そんな多くの先生方を“尻目”に、背に腹が変えられなくなった先生方が“安売り”をかけ、業界全体の“顧問料水準”が下がってしまっているのが、最近の傾向だとも言えるのです。こうした中で、今後“顧問料”は、どのように設定して行くべきなのでしょうか。
  それを考えるヒントが、実は“士業こそが商売の王道にある”、つまり“一般の商売の方が商売の本姿”を見失っているのではないかという視点に立ってみることなのです。
       
   
    【02】 値下げは客のためならず!
   
        たとえば、さして特徴も魅力もない商品を売ろうとします。売り手には、何一つ、アピールポイントが見つかりません。それどころか、『こんなもの買う人が可哀想だ』とさえ思います。そんな時、売り手はどうするでしょうか。当然、驚くほど値段を下げます。
  ところが、ここに大きなポイントが眠っています。『買い手が可哀想だ』とさえ思う商品が、値を下げる程度で売れるのでしょうか。安ければ、客は何でも買うのでしょうか。そんなことはありません。なぜなら、売り手は“客のために値段を下げた”のではないからです。
  では、誰のために下げたのでしょうか。それは実は、売り手自身のためではないでしょうか。
       
   
    【03】 行動時にしか目覚めない“良心”
   
        “良心”というのは不思議なもので、黙って受け身で生きている間は、いるのかいないのか分からない程、存在感がありません。自分では何もせず、他者を非難するのは本来、最も“良心”に反するべきことですが、“何もしない”と良心は、本当に静かなのです。
  ところが、どんなに小さなことでも、“行動しよう”と決めると、とたんに“良心”は目を覚まします。『こんなことをして良いのだろうか?』と、瞬く間に囁き始めるのです。もちろん、もう一度“良心”を眠らせるのは簡単で、『誰でもしている』などと言えば、またすぐ眠ってしまうのですが、パワフルな良心は、“不安”という形で、心の底に居座り続けます。
  その“不安”と折り合いをつけなければ、本来“商売”などできるはずがないのです。
       
   
    【04】 商売は“評価”の応酬
   
        それは“商売”が“金儲け”だからではありません。商売が“評価合戦”だからです。仮に、道行く人と『お前、不細工やなあ』『あなた、頭が悪いわねえ』などと“評価合戦”をしてみてください。たとえ、褒められることがあっても、徐々に、人と会うのさえ億劫になるでしょう。
  商売では、たとえ口に出さなくても、『この商品不細工やなあ』『あなたのサービス悪いわねえ』と言い合いながら、経済交換を繰り返しているのです。“評価し合っている”とはそういうことです。商売を行うということは、つまり、何も知らない“ド素人”の顧客から、勘違いで酷評されるリスクを、自ら進んで負うということです。
  この覚悟なしに商売をすると、必ず心の底が傷付きます。たとえ『素晴らしいサービスだねえ』と高く評価されても、相手は何も知らない“ド素人”ですから、そもそも、そんな人に“上から目線”で褒められること自体、愉なはずがないでしょう。
       
   
    【05】 安売りは客の酷評をかわす策の1つ?
   
        ところが、そんな“心の窮地”を緩和してくれるものが2つあります。その1つが“安売り”なのです。なぜでしょうか。それは、私たちが“安モノにはあまり関心を持たない”、つまり“安モノをアレコレと評価しない”傾向があるからです。
  何をどう批判されても、“安いから”という言葉は、万能の鎧のように売り手の心を守ります。それどころか『こんなに努力して安くしているのに、文句を言うのはおかしい!』と、顧客を見下すパワーも、そこには生まれるのです。そこまでではなくても、顧客に『高いなあ』と言われれば説明したくなりますが、『安いなあ』と言われる時は、たとえそれが“蔑視”のようでも、特段気にはならないでしょう。
  だから、楽しく商売をしようとするなら、『安売り』を理念にまでしてしまっている企業のように、安売りに賭ければよいわけです。
       
   
    【06】 士業の事情
   
        ところが、先生方はそうは行きません。それは、収入を確保しなければやって行けないという切実な問題があるからではなく、“価格自体”が先生方の評価につながるからです。
  流通を旨とする営業者なら、商品やサービスの価格がどうであれ、自分が顧客に受け入れられれば“楽しく商売できる”のですが、商品の生産者やサービスの提供者は、そうは行きません。顧問料を下げたら、実収入が減るばかりではなく、『その程度の先生』と評価された気分になるでしょう。
  ただ、なぜこんな遠まわしな話をするかと申しますと、それは、現代の社会的な“商売感覚”の、かなり深いところまで、“流通系”の価値観に浸されてしまっているからです。つまり“商売”と言えば、商品を仕入れて売る“営業者”が社会的にイメージされ、商品を作る生産者やサービスを提供する主体は、その“営業者”の手下でもあるかのように扱われる傾向があるということです
       
   
    【07】 士業の商売は営業者の商売とは大きく違う!
   
        このように考えれば、士業先生が“嫌い”な商売とは、商品を安く仕入れて安く売ることを旨とする“営業者の商売”をイメージするからだという気がしてきます。というより、商売が“営業カラー”に染まり尽してしまったために、二の足を踏むのでしょう。
  しかし、そんな思いを抱いているのは、先生方だけではありません。多くの中堅中小企業は、特別な技やノウハウを持ちながらも、“安く仕入れて安く売る”のがビジネスだという、歴史的には最近発明された“概念”によって、社会的弱者のポジションに押し込まれているのではないでしょうか。
  更に悪いことに、そんな中堅中小企業と先生方が、顧問料という“価格のせめぎ合い”をしてしまうという悲しい現実までもが、おまけに付いてしまうのです。
       
   
    【08】 2つ目の話は次回
   
        そのため今、生産者やサービス提供者の“商売常識”に、少なくとも“私たちの関係者”を引き戻して行く必要があるのです。“安く仕入れて安く売る”のではなく、“適正な等価交換を行う”のが商売だと、もう一度“常識を呼び起こす”必要があるということです。
  そして、そんな“常識の再生”が、“心の窮地”を緩和してくれる2つ目のものなのです。もちろん、ただ“心を癒そう”としているのではありません。心の負担が小さくなると、それと反比例するように、私たちには“行動意欲”が生まれます。もっと言うなら、“提案する勇気”がわいてくるのです。
  そして、後になって考えてみると『なんだ、結局“提案する勇気”がなかっただけなんだ』と感じるほど、“商売”が身近になっているはずなのです。その“2つ目”は、次回の話にいたしましょう。
       
   
    【09】 余談:大手“製造”企業はなぜ“安売り”をするのか?
   
        ただ『同じ生産者でも、大企業は安売りを行うし、それを苦にしていない』と言われるかも知れません。しかし、大手メーカーは、こう言って良ければ、商品そのものに誇りを持ってはいません。むしろ、それを製造する“装置力”を競い合っているのです。つまり、安売りをかけても装置を稼働したいのが、大手製造業だということです。
  職人は商品に誇りを持ち、大企業は装置に誇りを持ちます。ただ、装置に誇りを持つあまり、大量に商品を製造し、『商品が売れ残って装置を止めるくらいなら、安売りした方が得』という、“自ら損を出して、その損を減らすことを得と考えている”ようなやり方は、未来人には、たぶん奇異に映るでしょう。予め“売れ残り”を作っておいて、それを売り切るために価格を下げるなんて、正気の沙汰とは思えない、と。
  現代に、イソップのような“シニカル”な童話作家がいないのが残念です。
       
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