公認会計士、税理士、会計事務所、マーケティング、コンサルティング
 
 
 
 
 
 
 
 
 

会計事務所、マーケティング、コンサルティング、ヒント集

株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.122】契約獲得:顧問先以外の経営者に正面からアプローチする手法
             

 『親しくなった(顧問先以外の)経営者に決算書を見せてもらうと、何だこれは…、と思うことがある』というお声を、会計事務所の先生から聞くことがあります。
 ただ、その時に問題指摘をしても、経営者に“会計事務所変更の営業を掛けられている”と感じられてしまうからでしょうか。既存の顧問税理士先生に相談され、結果として、せっかくの関係を悪化させることもないとは言えないようなのです。
 そんな場合に、専門家としての問題指摘責任の貫徹ばかりではなく、それを自事務所のビジネス・チャンスに繋ぐ方法はないのでしょうか。顧問先市場縮小の中で、注目され始めた方法があります…。

             
   
    【01】“見識を持つ”ことは、それ自体“重荷”?
   
       顧問先以外の企業の“問題だらけ”の決算書を目前にして、何も指摘しないでいることは、専門家として“じくじ(忸怩)”たるものがあるかも知れません。もちろんそれは“悔しい”と言うより“専門見識を発揮しないご自身への自責の念”のような感覚かも知れません。
 その意味で、“見識を持つ”ことは、それ自体“重荷”だという言い方もできそうです。しかも“じくじ”たる思いを解消するために、決算書の問題指摘をしてしまうと、確かに『この先生、顧問事務所変更の営業に来た』と思われ、もっと不快な思いをしないとも限らないのです。
 専門見識の価値が分からない人には、不用意な指摘をすべきではないのかも知れません。しかし、打つべき手はないのでしょうか。
       
   
    【02】新規設立企業との顧問契約も難しくなった昨今では…
   
       現実には、医者の間でも実力差があるように、会計事務所間でも“見識差”があるのでしょうが、それ以前に、安価な業者を通じて“やっつけ決算”をしている企業は、かなり多いのではないでしょうか。平成期に急増したケースです。
 そんなケースに対して沈黙を続けていると、逆に“顧問契約と称して高額の決算料を吹っかけて来る会計事務所がある”という謂れのない攻撃(口撃)にも、結果として、沈黙を決め込んでしまうことにもなりかねません。
 もちろん“違い”は、分かる人には分かるものですが、たとえば“新規設立企業”でも、会計事務所との契約をなかなか進めない理由の一つに、そうした“風評”の影響があるのかも知れないのです。
       
   
    【03】相手の意識を変える前に必要事項を必要な範囲で語り切る方法
   
       しかし、人の意識を変えるのは簡単ではありません。そこに、医者のような“セカンド・オピニオン”を考えてみる余地が生まれるのです。もちろん、その“セカンド・オピニオン(以下SO)方式”は、新規顧問先獲得にも応用できますが、先を急がず、まずは専門家としてのスタンス確立から入るべきだと思います。
ただ、そのスタンスの開始は面倒なものではなく、『わが事務所では、セカンド・オピニオン方式を採用していまして…』と断る“だけ”でスタート可能です。つまり、問題のある決算書を前に、“具体的な問題指摘”に入るのでも、“見なかったこと”にするのでもなく、『セカンド・オピニオンが、御社に必要ですか?』と問うわけです。
       
   
    【04】セカンド・オピニオン(SO)の意図や効果
   
       その際、会計事務所のSOの意図や重要性を解説するツールがあれば、医者の“白衣”のように、会計や税務の“素人”にも、先生方の見識の高さが分かりやすくなるはずですが、口頭でも効果はあると思います。
 SOなのですから、いきなり顧問契約をひっくり返しに行くことにはなりません。あくまで“セカンド=二番手の見解”なのです。しかし、逆に“セカンド”ですから、こう言ってよければ『言いたいことを言える』のではないでしょうか。そして、その内容が多少過激になっても、“検討材料”になるわけですから、それは、経営者にも有益なものであるはずなのです。
       
   
    【05】判断を下すのは経営者なのだから…
   
       その結果、経営者が既存の顧問会計事務所や記帳代行業者と相談して、どんな判断を下すかは、経営者次第となります。しかも、経営者は『はは〜ん、この先生、営業を始めたな』とは、多少とも思いにくくなりますから、その検討は“真摯”になりやすいのではないでしょうか。顧問契約の変更に至らなくても、SOを発信した先生は、やや失礼な言い方ですが、“隅には置けない”存在になっているはずです。
 実際、こうした“意見提供”をされている事務所では、顧問契約獲得ばかりではなく、既存の顧問契約を維持する企業からも、事業承継対策や決算分析を依頼されることがあります。“会計見識”が経営に果たす役割は、必ずしも決算(経理)だけではありませんから、計画経営(経営管理)あるいは資金管理や資金調達(財務)分野でも、先生方さえその気になれば、会計事務所の有料業務が創造できるはずなのです。
       
   
    【06】会計事務所の将来市場の三大柱
   
       しかも、それら“決算外”の分野は、今後の会計事務所の重要な“市場”になるかも知れませんし、決算ソフトが普及する中では、逆に、事業承継、計画経営、財務支援が、将来の会計事務所の三大柱になることも決して奇異ではないからです。
 その上、企業の決算依頼先が記帳代行業者のような機関なら、記帳代行は既存の機関に任せてしまい、上記“三大柱”で会計事務所が個別契約を獲得することも、あり得るはずです。『いやあ、三大柱には決算程の収入安定性がない』という見解も的を射るものかも知れませんが、その一方で決算顧問契約の安定性が、今後も続くとは限らないのです。
 もちろん、三大柱とともに決算顧問契約の受注もあり得るでしょうが、今後の決算支援は“企業に対するシステム活用指導”に変わって行く可能性も強いでしょう。
       
   
    【07】有料のセカンド・オピニオンが持つ効果
   
       決算受注でも、三大柱提案でも、企業数が減少傾向にある中では、提案機会が確保されなければなりません。そして、その提案機会を“専門家”らしく作り出すために、SOつまりセカンド・オピニオン方式が注目され始めているのです。
 その際、SOに際して“何をするか”そして“どんな報告書を出すか”を明確にする“ツール”があれば、SO自体を有料化することも可能でしょう。『有料化は考えない』のも一つの選択肢ですが、有料化しておけば、関心の薄い、つまり有料提案に乗らない先にからも問題指摘を迫られることで、先生方の貴重な時間を浪費する心配もなくなります。
 更に、有料でもSOが欲しい企業は、決算の依頼先変更を視野に入れているのでしょう。有料を切り出すだけで、“見込み先”かどうかの選別も容易になるのです。
       
   
    【08】無料のセカンド・オピニオンが持つ効果
   
       もちろん、セカンド・オピニオンを無料で、しかも口頭で行うことにも、十分な効果があると思います。その際にも“セカンド・オピニオン方式”を、相手経営者に認識あるいは意識させなければなりませんが、その意識さえ持たせ得れば、『専門家として言うべきことが言えない』という“じくじ”たる思いをしなくて済むのです。
 “じくじ”たる思いの回避のみならず、多少の言い過ぎがあっても、相手経営者との関係が壊れる懸念は薄いでしょう。経営者にとって、問題指摘は貴重な経営判断材料になり得るからです。
 そんな関係が出来上がれば、既存の顧問会計事務所には対応できそうもない三大柱の支援依頼が得られる可能性が高くなります。
       
   
    【09】テーマを特化してセカンド・オピニオン方式を活用
   
       特に、自社株に掛かる贈与税・相続税の納税猶予制度(事業承継税制)に関しては、その分野が苦手な会計事務所から、『あれは使えない』として一蹴されている企業も少なくありません。会計事務所が全て、事業承継税制に詳しいとは限らないからです。
 そのため、テーマを事業承継税制に絞り込んで、『有効か有効でないか分かりませんが、制度活用に関してセカンド・オピニオンをご提供しましょうか。特に、同制度の特例措置には期限がありますから、検討だけでも進めるべきですよ』というアプローチも、今、効果的であるはずなのです。
 もちろん、その時、自社株の詳細評価や経営者の個人資産の把握等の実務を提供するわけではありません。バランスシートや経営者の口頭説明などによる財産状況推定から、『今後、どのような調査や検討を行うべきか』を示唆するだけで“意見”としては十分です。詳細実務は、受注を得てから行うもので、受注前には“今後の課題”を明確にするのが、ビジネス上の鉄則でしょう。
       
   
    【10】高度専門業らしいビジネス姿勢を自然に体現する方式
   
       国内市場の縮小に伴い、会計事務所にも“ビジネス感覚”が不可欠になりつつあります。しかし、その際には、それが『先生、営業熱心ですねえ』という皮肉の素にならぬよう、あるいは専門業の専門性に傷を付けてしまわぬよう、“高度専門業のビジネス感覚”でなければならないはずです。
 そして、前広に“高度専門業のビジネス感覚”を実現しやすくなるスタンスが、SOつまりセカンド・オピニオン方式に内在されていると言えるのです。確かにSOは奥の深い話ではありますが、まずはその方法を具体的に検討してみないと、効果的で効率的な道は見つからないとも言えるのかも知れません。
       
       
   
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